アンティークコルクスクリューのコレクションを始めると、まずこのトマソンタイプが欲しくなるというほどの代表的なアイテムです。
最近ではリプロダクションも作られているようですから、ワインショップなどで同型の新しいものを目にすることもあると思います。
このトマソンタイプのついては、私のHPのなかで、フレーム式の3番の項目でもご紹介してますし、私のオタカラ(第一回)もトマソンタイプの一つをお出ししてますが、今週のコルクスクリューで取り上げるのは始めてです。
由来なども含めて、少し詳しくご説明しましょう。
18世紀の終わり頃、英国はバーミンガムに乗馬用ベルトのバックルや金ボタンを初めとする装飾的な金属加工業者で、エドワードトマソンという人がいたのですが、青銅製の美術品の複製なども手がけていて上流階級にもその腕が認められ、後に(1832年に)サーの称号も得ることになるような人です。
このエドワード・トマソンが19世紀に入った頃に関心を持ったのが、コルクスクリューです。
この頃、上流階級の間で、ワインを(セラーマンないしバトラーが事前に抜いてしまうのでなくて)ホストがテーブルのところで抜くのがはやるようになっていました。
いつの世でも、自慢のワインをもったいぶって開けるのを楽しみにしていた人がいたということでしょう。
ところがその当時のコルクスクリューは、ストレートプルないしは初期のフレーム式(ファローアンドジャクソンのような)しかなかったので、使い慣れていないご主人たちにはなかなか上手く開けられないことが多く、時には悲惨な結果に終わることもあったんでしょうね。
そこで、素人にも間違いなくコルクが抜ける道具としてこのトマソンが発明され、上流の人々の間で一躍人気商品となったということです。
お金持ち用の高機能製品として(お金に糸目を付けずに)開発されたので仕組みは相当複雑なものになっています。
コルクを引き上げるためのハンドル回転方向とは逆ネジになっている太目のシャフトの中側にもう一本の細目の順ネジシャフトとがあって、二重シャフトになっている点が特徴です。
まず細い方のシャフトだけを一杯までねじり上げたところから動作を開始しますが、子の時ワームがすっぽりとフレームの中に収まるようになっているため、自然にワームの先端がコルクの中央に当てられるようになっています。
そこからハンドルを回していくとワームがしっかりとコルクの中に差し込まれていき、細い方のシャフトが降りきったところで、自然に太い方のシャフトが(逆ネジになっているため)上がりはじめ、ハンドルを回しつづけるだけでコルクが抜け上がってくるのです。
太い方のシャフトが上がりきったところでコルクはボトルから抜けますが、まだフレームの中に残ったままです。
そこで今度はコルクスクリューをフィンガーボウルか何かの上に持ってきてハンドルを逆に回しはじめます。
すると、先ほどと逆の動きで、コルクは一旦フレームの中から出てきて、さらに回しつづけるとワームがコルクから引き抜かれ、見事コルクはフィンガーボウルの中にポトリと落ちるのです。
このように、一切ボトルの口とかコルクに触れることなく、ボトルからコルクを抜き、コルクスクリューからもコルクを外せると言うので、画期的大発明として上流社会で大喝采を博したことは想像に難くありません。
地下のセラーに長く寝かせておいたボトルの口やコルクはかなり埃まみれになっていて、お上品な人々は手にも触れたくなかったんでしょうね。
その証拠に、トマソンタイプには必ずと言って良いほど、写真のような埃払いのブラシが付いています。
メカニズムのためにも必要な大き目のフレームは装飾性も兼ね備えていて、大体の場合写真のようなバッジが付いていて、トマソン氏(後にはトマソン卿)の特許のタイトルである
"ne-plus-ultra" (究極のと訳すのでしょうか)
という文字が刻まれています。
上の写真のものが、もっとも一般的なモデルですが、オタカラで紹介したようにバレル型のフレームにブドウのレリーフをあしらったものや、フレームに窓を開けたものなどもあります。
もちろん珍しいデザインのものほどお高くなるのは当然ですが、もっともスタンダードなものでも400ポンドくらいはするという高級品です。
トマソン社の工場で作られたものと、その後別のメーカーで作られたもの、ハンドルをあとから付け替えたらしいもの、などで大きく値段が変わりますので、購入時には細かい点に気を付けたいアイテムです。
(1ポンド=約190円) |