何でもなさそうな工夫ですが、英国ではこの皮のカバーをかぶせることで、1876年に
Wolverson という人が実用新案を取っています。 ではなぜこの工夫がそんなに大きな意味を持ったんでしょうか。
皮をかぶせたのはただのすべり止めかもしれませんが、わたくし江口の想像はこうです。
ヨーロッパでも19世紀中頃になると、新しがり屋のご主人たちの間ではワインボトルをテーブルサイドで開栓するというマナーも見られ始めたのですが、一般的にはお屋敷のバトラーとかその部下のテーブル係が、地下のセラーでワインの栓を抜いてから上に持ってくるというのが決まりでした。
これは、ワインの品質が不安定ですべてのボトルが食卓に出すのに耐えられるとは限らなかったこともありますが、やはりこうした食卓の準備という仕事は使用人が裏方でやるべきということだったのでしょう。
このモデルのような指を引っかけやすい実質的なデザインは
「セラー用のコルクスクリュー」と呼ばれ、使用人が地下のセラーで使う典型的なデザインだったもので、よく当時の絵画やプリントなどにも登場します。
冬場になると、セラーもしんしんと冷え切って、その中でワインを抜くにはかじかんだ手で冷たいコルクスクリューを扱わねばならず、大変な仕事でした。
かといってボトルが滑るし、細かい動きができないので手袋をはめるわけにも行かず、ではいっそコルクスクリューのほうに手袋をはめてしまえ、というのが本品の発想だったのではないでしょうか。
上級使用人のバトラーだけが使っていたのか、セラー係の不満を押さえるためにバトラーが買ってやったのかは分かりませんが、当時のお屋敷の使用人のニーズに応えた新製品だったことは間違いないでしょう。
使用人用品にしては、皮の仕上げなどはなかなか丁寧ですし、ワームにも丁寧なカットが施されていて、そこそこ高級品ではあったようです。
もとをただせば実用品なので、そんなに高価ではないのですが、皮の状態が良いものが少ないのでしょうか、ロンドンのアンティークショップでもそんなには置いてません。
みつかれば 20-30ポンドくらいで買えるのではないでしょうか。
皮のカバーのない普通の 「セラータイプ」は
10ポンドとか 15ポンドですが、デザインや風合いの良いものはアクセサリーとしておもしろいし、実用的であることもあってお買い得だと思います。 |